X線材料強度部門委員会のご案内

日本材料学会 X線材料強度部門委員会
委員長 西田 真之(神戸市立工業高等専門学校)


 X線材料強度部門委員会は,1961年(昭和36)にX線応力測定部門委員会として発足し,1965年に現在の委員会の名称に変更して今日まで活動を続けています.2021年の本年で発足60周年を迎えます.本委員会は,X線回折を主とする材料評価手段を通じて材料の強度特性を解明しようとする学術分野,すなわちX線材料強度学に関する学術の発展および技術の向上に寄与することを目的としています.

 本委員会の発足当初よりX線回折を主要な手法として結晶材料のひずみを測定し,残留応力や微視的変形機構を解明するために研究を続けています.回折面依存性,相応力,3軸応力および集合組織などX線応力測定の優位性を生かしながら,多種多様な材料を対象に研究を広げてきました.さらに,疲労損傷,塑性変形過程などの研究にも取り組んできました.これまでの成果は,「X線応力測定法」(養賢堂,1961年,1981年),「X線材料強度学---基礎編・実験法編---」(養賢堂,1973年)にまとめられています.

 X線応力測定の実用化の面では,フェライト・マルテンサイト系鉄鋼材料,オーステナイト系鉄鋼材料,セラミックス材料へと応力測定の方法を適用してきました.1973年以来,これらの成果は「X線応力測定法標準」(鉄鋼編,セラミックス編)日本材料学会の標準としてまとめられています.また,中性子の透過力を生かし深部の応力測定の方法を検討し,その成果を2005年に中性子応力測定標準(X線材料強度部門委員会標準)としてまとめました.また,これまでの鉄鋼およびセラミックス材料のX線応力測定法標準を世界に普及し,また国際社会での産業界の活動を支援するために,Standard Method for X-Ray Stress Measurement (英文版X線応力測定法標準) を発刊しました.さらに,最新の標準として二次元検出器に対応した「cosα法によるX線応力測定法標準--フェライト系鉄鋼編--」を2020年2月に発刊しています.

 本委員会は,毎年3回の定例委員会を開催しており,2021年には第200回記念のX線委員会の開催となりました.委員会では活動の議論と合意を大切にした研究活動を展開しています.定例委員会では,幅広い研究の動向を吸収し,本来の研究を高めるために積極的に講演会も開催しています.これらの委員会活動により,委員の研究を活性化させるよう努めています.

 本委員会ではX線材料強度に関する研究および 技術を育成するため部門委員会賞を設けています.業績賞,研究・開発賞に加えて2019年度には功労賞を新設しました.2020年度は,功労賞:八代 浩二 氏(山梨県産業技術センター)」,功労賞:坂井田喜久 氏(静岡大学)および研究・開発賞:城 鮎美 氏「放射光を利用した単結晶・粗大粒の応力/ひずみ測定」(量子科学技術研究開発機構)となっています.

 特筆すべきご報告として,2019年度の日本材料学会論文賞の3部門においてX線委員会の委員が下記の論文賞を受賞しました.

【論文賞】
「二重露光法による粗大粒材の応力測定」
 鈴木賢治(新潟大),菖蒲敬久(原子力機構),城 鮎美(量研機構)
 Vol.68, No. 4, pp. 312-317.

【論文奨励賞】
「X線回折による表面改質層の熱時効評価」
 岡野成威(大阪大)
 Vol.68, No.4, pp. 338-345.

【技術賞】
「Ni基超合金タービン翼の結晶方位測定技術の開発」
 湯村友亮(三菱重工),栗村隆之
 Vol. 68, No. 4, pp. 346-350.

X線委員会のみなさまの卓越したご活躍に敬意を表します.

 委員会による企画として開催されるX線材料強度に関するシンポジウムは今年で54回を迎えました.例年9月頃の開催ですが,2020年度はコロナ対応のため12月の開催となりました.初めてのネット会議として開催し,ネットを介してではありますが予想以上に活発で熱心な討論が展開されています.表面改質,単結晶,粗粒,薄膜,集合組織,高分子材料など幅広い対象材料と多様な手法により研究が展開されています.それらの代表論文は,審査を経てX線材料強度特集号として発刊され,X線材料強度部門委員会の活動の趨勢を知ることができます.また,2021年1月には第57回X線材料強度に関する討論会が同じくネット開催され,「X線材料強度研究の最前線--学会賞受賞記念講演--」として前述の学会賞受賞の記念講演が行われ熱心な討論が展開されました.

 本委員会は,大学・学校,研究所,企業などの100余名の個人および会社委員から構成されています.本委員会の活動および最新の動向は,委員会のホームページ(https://x-ray.jsms.jp/)から知ることができます.所属,研究分野を問わず,X線材料強度に興味のある方,またX線応力測定を必要とする方の入会を歓迎しています.ぜひ,現委員または日本材料学会へご連絡ください.



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